第22章 ~恋ネコ②~ ダメ出しプロポーズ
…結局、何も言えないままだ…
うぅ…
リエーフは今ごろ、キメキメだろうか…
ポケットに手を突っ込み
指輪の箱をいじりながら
トイレから戻ったアッキーと
フラワーパークの出口へと向かいました。
『…寒いね。』
俺のダウンのポケットに
手をいれようとするアッキー。
『あ!』
こっちはダメだ。
指輪が入ってる!
…思わずその手を
キツくつかんでしまって。
『…とらちゃん、』
アッキーは歩みを止め、
キッとした顔で言いました。
『今日、なんか、おかしい。
絶対、なんか隠してる。
言いたいことあるでしょ?』
…ヤバイ。
俺、今、ピンチ。
全く予想してなかった展開。
どうなるかわかんねーけど、
とにかく今、言うべきことは一つだけ。
…フラワーパークを後にして
駅に向かうカップルが
続々と後ろを通るので、
とりあえず、
とりあえず、
建物の向こう側に
アッキーをひっぱりこみました。
『な、なに?』
『あの…これを、渡したくて…』
ポケットから取り出した指輪。
『これって…クリスマスプレゼント?』
『違う…プ、プロポーズをしようと…』
『…とらちゃん…』
指輪、出しちゃったし。
えいっ、もう、言うしかねーだろ?
『あのさ、俺と、け、結婚して…』
『とらちゃん、』
なんともいえない表情のアッキー。
『ありがとう。嬉しいよ。でもさ、』
…でもさ、何だ?…
『今、ここで、それ言うかな?』
ぶぅぅぅぅぅぅん…
響く重低音は、
中のイルミネーションを灯すために動く
大きな発電機のモーター音。
チカチカチカチカ…
光るのは、"この先立ち入り禁止"を示す
工事現場のポールの赤いランプ。
…だよな。
たった今まで、
ロマンティックムード満点の
イルミネーションと
クリスマスソング溢れる公園を
2周も散策したというのに。
俺、よりによって、
なんで今ここで
プロポーズしてんだ?
『これはこれで、嫌いじゃないよ。
ある意味、とらちゃんらしいし。でも…
とらちゃん、
いろいろ考えてくれてたんでしょ?
ここで私が指輪、受け取ったら
もう、一生、ここがプロポーズの場所に
なっちゃうよ?とらちゃん、それでいい?』
それでいい?と聞かれれば…
イヤだ。
ちゃんと、
気持ちにふさわしい場面で渡したい。