第22章 ~恋ネコ②~ ダメ出しプロポーズ
『あの…なぜ俺は今ここに…』
『夜桜が満開だから。』
『それは…そうですけど。』
『それと、もう一つの理由はね…』
…やっぱ、他にも理由があんだな。
なんだ?なんかヤバイこと
手伝わされたりしねーだろな?
なんか、昔、
国語の授業で習った気がするぞ。
"桜の樹の下には屍体が埋まってる
それは信じていいんだよ"だったっけ。
誰か、男の人が書いた詩。
縁起でもねぇや。
何で今、そんなの思い出したかな、俺。
アッキーの口の動きが
スローモーションみたいに
はっきり見えました。
『山本くん、つきあって。』
…もうひっかからないぞ。
脱ぐのは、ズボンじゃなくてヘルメット。
つきあうって、何につきあうのか?
ちゃんと確認してから返事。
『はぁ、いいですよ、
何につきあえばいいですか?』
『だーかーらっ、
私の彼氏になってほしい、ってこと。』
え、え~~~~~っ?!
断ったら俺、
桜の樹の下の
屍体にされるんじゃねーか?
『な、なんで、ですか?』
『前から、思ってた。
一生懸命だし素直だし元気だし優しいし
おもしろいし楽しいし個性的だし、
超 私の理想のタイプ。』
…誉め殺しって、ってこういうことですか?
『私達、つきあったら、
絶対、楽しいと思うんだ。
今、私のこと好きじゃなくてもいいから。
嫌いじゃなかったら、お試しでいいよ。
彼女がいるんだったら、諦めるけど…』
『い、い、いないっす。
お試しなんてそんな贅沢な…』
『じゃ、いい?』
『はぁ、俺でいいんスか?』
『山本くんがいいの!』
『それ言うためにわざわざここまで?』
『ん。今年のこの桜は、絶対、
山本くんと見るって決めてたの。そんで…』
『…そんで?』
『もし断られたら、
山本くん、ここに残して帰ろうと思って。』
『ええっ?置き去り?!
あの、つきあいます、つきあいますから
連れて帰って下さいっ!』
『ウソに決まってるじゃん(笑)』
『俺で遊ばないでっ(涙目)。』
『あぁ、よかった!…ね、とらちゃん…』
…いきなり"山本くん"から"とらちゃん"に
変わったその瞬間、奪われた唇。
二人のファーストキスで
俺が後ろによろめき頭をぶつけたことは、
桜の木しか、知らない…
こうして俺はアッキーに
日々、飼い慣らされて?!
いくことになりました。