第21章 ~恋ネコ①~ 真っ直ぐプロポーズ
なんと、俺たちの席は、窓際!
これをラッキーと呼ばずになんと呼ぶ?
世界中が、
俺を応援してくれてる気がするっ!
…静かに景色が流れだし、
弦楽四重奏の生演奏をバックに
料理が運ばれて来はじめた。
うさぎみたいなかわいいコートを脱いだ
アキちゃんは、
これまた白うさぎみたいなモフモフの
ニットのワンピース。
ノースリーブから見える肩がセクシーで
逆に、ハイネックに包まれた
胸元の膨らみは強調され、
もう、今夜の本当のメインディッシュは
俺の子うさぎちゃんの生き造りだぁい、
ゴクリ…
その前に、絶対、プロポーズ、決めるぞ!
俺の下心と野望が渦巻くことなど
知りもしないアキちゃんは、
窓から見える夜景に感動し、
出てくる料理とサービスに感動し、
乾杯で飲んだスパークリングワインに酔い、
ひとつひとつに声をあげ
瞳を輝かせ、
頬をピンク色に染め、
本当に、かわいい。
ここをプロポーズの舞台に選んで
本当によかった。
食事は進み、
デザートはクリスマスデザインの
フランボワーズのムースと
フォンダンショコラ、
そして熱いコーヒー。
コーヒーを飲んだら、
なんだか体が熱くなってきた。
いよいよ、だな。
『アキちゃん、俺、ちょっとトイレ。』
いざという時に
"もよおして"焦らないように(笑)。
トイレでスッキリし、
冷たい水で手を洗い、
頬をパンパンと叩いて気合いをいれる。
うん。
俺はここにいる誰よりもカッコイイし
アキちゃんはここにいる誰よりもかわいい!
…大丈夫。
試合でも緊張したこと、ないんだ。
今日もビシッとバシッと決めて見せる。
なんと言っても俺は
誰もが認める"次期エース"!
…あれ?次期、っていつだ?
ずーっとそう言われ続けてきた気が…
ま、いいか。"エース"ってついてっから
悪い言葉じゃねーよな。
席に戻ると、今度はアキちゃんが
トイレに行った。お化粧直しも、かな。
この二時間、ずーっと、
景色とアキちゃんばっかり見つめてた。
目の前にアキちゃんがいなくなって
初めて、ふと周りを見回す。
あ、
あれ?
おかしくね?
さっきまで、
この船上レストランの席を
埋め尽くしていた
ほぼ100パーセントのカップル達の姿が…
どっかに、消えた?