第21章 ~恋ネコ①~ 真っ直ぐプロポーズ
仕事を終えて落ち合った俺たち。
手を振りながら
小走りでやってきたアキちゃんは、
フワフワの襟のついたグレーのコートが
ウサギみたいでかわいい。
『どこに行くの?すっごく楽しみ♥』
『今日は俺がエスコートするからね!』
俺のコートのポケットの中で手を繋いで
二人で歩いてやってきた、
クルーザーの乗り場。
白くて大きなクルーザーは
外国の船みたいにかっこよくて、
パリッとした制服を着たスタッフが
エレガントに迎え入れてくれる。
アキちゃんが、
ツンツン、と俺の袖を引っ張る。
『なに?』
かわいい口許に耳を寄せると
アキちゃんが小さな声で訊いてくる。
『ほんとに、ここで、
ご飯が食べられると?』
…ディナー、じゃなくてご飯、だって。
アキちゃんも興奮してるの?
かっわいいなぁ♥
階段を上がると、そこは船の中とは思えない
高級レストラン仕様のしつらえ。
深いグリーンのテーブルクロスの上には
一輪づつ、深紅のバラが飾ってある。
揺れるキャンドルの炎は
この空間をより一層、
夢の世界のように揺らめかせ、
整然と並んだ食器とグラスとシルバー類は
まるで宝石のような輝きを放って、
これから始まるとっておきのひとときを
演出してくれているようだ。
黒い瞳をまん丸にして
立ち止まるアキちゃん。
『…す、すごい!
リエーフ…私、こんなの、初めてや…』
ズキューン🔫
はい、俺の胸、
早くも今、撃ち抜かれました。
でもでも、アキちゃん、
夢物語は、これからだからネ!
たくさんいるカップルの中で
アキちゃんを一番幸せに
してあげるからっ。