第5章 優しい月【うちはサスケ】
飛び起きたら、まだ外は暗かった。
額には冷や汗をかいていて、息はなかなか整わない。
「……っ。チクショウ……」
あの日から、ずっとそうだ。
むせ返るような血の匂い。
静まり返った荒れた領地。
そして……満月と、紅い眼。
毎晩のように、あのときの悪夢がオレを襲ってくる。
『愚かなる弟よ…俺を殺したくば恨め、憎め!そして醜く生きるがいい…』
最後に聞いた、アイツのあの言葉が頭の中を何度も駆け巡る。
大切な家族を、一族を殺され
自分も殺されそうになった。
…兄さん……尊敬していたのに…!
「……っ!ぅわぁぁぁ!!!」
悲しみと怒りと悔しさと、色んな思いが混ざり合って
叫びながら部屋を荒らした。
誰もいないこの暗い空間が
ただ、恐ろしかった。