第4章 銀狐と少女【はたけカカシ】
「お前は同じ里の仲間で、亡き親友の大事な部下だからな、世話も焼きたくなるさ。それに、カカシには期待もしているから。お前ならいつか火影にだってなれるって、思ってたりするくらいに」
笑顔を崩すことなくそう言う彼に、ゾッとした。
俺が火影…?
縁起でもないことを言う人だ。
俺なんかが火影になるような状況、この里が相当危機に瀕していない限りあり得ない。
そもそも、この人は四代目火影の先生が亡くなってからずっと五代目になれと言われていて拒否しているくせに、俺にそれを言うのか。
そんな俺の思いが顔に出ていたのか、
「俺はリエが誰より大切だから、里長の火影には向いてないの」
なんて、空風上忍は苦笑する。
……大事なものが何もない俺は、もっと向いていないとは思わないのだろうか。
「ミナトや、お前が思い続けている奴らの分まで…お前に胸張って生きて欲しいんだ、俺は。だから、後ろばっかり見てんなよ」
「…本当にお節介ですね。お気持ちだけ、頂戴しておきますよ」
嫌味っぽくそう返して、彼の笑顔から目を背けた。
「リエのこと、ありがとな。次からはDランク任務もちゃんと完遂しろよ」
俺の態度に怒ることもなく、彼はまた笑って、娘の待つ家へと帰って行く。
その背中を見送って、俺は目を閉じた。
誰に何を言われても
少なくとも今の俺は、前を向けない。
まだ俺は、空風上忍のように
強くは、なれないからーーー