第13章 10月16日*ルイ*
馬車が止まり、外から微かに話し声が聞こえる。
窓からそっと外を覗くと、ふわりとした金髪に美しい立ち姿。
いつもなら後ろからぎゅっと抱き付きたくなるんだけど、ここはじっと我慢。
すると、コン…コン…と二度恐る恐るドアをノックする音が部屋に響いた。
やっと会える。
扉を開いた先の大好きな人に自然と笑顔になる。
「ルイ!お誕生日おめでとう!」
目を見開いて立ち尽くしているルイに、私は我慢できずに抱き付いた。
「…。ちゃんと覚えててくれたんだね。」
後ろ手で扉を閉めて、ルイも優しく抱きしめ返してくれた。
「当たり前でしょ?だって、今日はルイが生まれた日だもん。」
「え…?」
ルイは私の言葉にこもった想いを理解できなかったのか、戸惑いを瞳に浮かべた。
「生まれてきてくれてありがとう、ルイ。」
ルイがこの世界にいてくれたから、私はあなたに出会えたの。
そう伝えたくて、でも言葉にするのは恥ずかしくて。
私はルイの胸に手をあてて、そっと背伸びをして唇を重ねた。
唇を離すと、ルイは頬を染めて柔らかい微笑みを返してくれた。
「…生まれてきてくれてありがとう、なんて初めて言われた。本当にに出会えてよかった…。」
少し目に涙を溜めて、今度はルイから私に口づけた。
「今日はいっぱいワガママ言っていいよ?だって、お誕生日だもん。」
「うん…。じゃあ後で聞いてもらうよ。折角の機会だしね。」
私はルイの何かを企むような悪戯っぽい笑みに気がつかなかった。