第10章 始まりの合図*レオ
「あれ?もうこんな時間か。ちゃんはすごく頑張るから教え甲斐があるんだよね。」
時計の針はあれからかなり進んでいて、夕食まであと30分程となっていた。
「レオが私にも理解できるように、分かりやすく話してくれてるからだよ。いっぱい褒めてくれるし、やる気出るの。」
「ちゃん…。」
レオは私の名前を呼ぶと、そっと自分の方へと私を抱き寄せた。
「…今日の公務はこれで終わりだったよね?」
「うん…。」
大好きな温もりと香りに、私はすっかり酔いしれていた。
すると、レオは眼鏡を外して机の上に置いた。
眼鏡をかけているレオは私にとって「先生」。
それを外したということは、「先生」ではなくなったことを意味する。
二人にしか分からない合図。
透明なレンズがなくなり、レオの紅い瞳が私の目を捕らえて離さない。
「俺だってドキドキしてたよ。可愛い奥さんが隣にいて、触れたくて仕方なかった。」