第10章 始まりの合図*レオ
ちらりとレオの方に視線を向ける。
レオは顔色一つ変えずに、説明を続けていく。
「夫婦になった」
そのことを意識しているのは私だけみたい。
「…ちゃん。ちゃん。」
名前を呼ばれて初めて、レオに気をとられて上の空だったことに気付く。
「どうしたの?心ここにあらず、って感じだったよ?…あんまり見つめられると照れちゃうんだけど。」
「あっ!ごめんなさい…。えっ…と、レオが眼鏡かけてるのもやっぱり素敵だなと思って。」
考え事をしていたのは隠したけど、それもいつも思っていたことなので、するりと口から出た言葉だった。
「…本当に真っ直ぐだな、ちゃんは。だけど、もう少しだから頑張ろうか。」
レオは少し顔を赤くして、照れ臭そうに微笑んでくれた。
「…ごめんね、レオ。せっかく教えてくれてるのに…。」
「たまにはいいけどね。ちゃんはいつも真面目に頑張ってるから。じゃあ始めるよ?」
「うん!」
いけない、いけない。
お互いプリンセスとして宮廷官僚として、それぞれの公務があるから、公式に認められているこの時間は大切な時間。
私は気持ちを引き締めて勉学に励んだ。