第9章 月の魔力*ゼノ*
空を見上げれば丸く満たされた月に、幾千にも瞬く星。
柔らかな月の光が、私たちを優しく照らしている。
「…今日は月が一段と綺麗だ。」
「今日は年に数回しかない月がきれいに見える日らしいんです。ゼノ様と一緒に見たくて…。」
「こんなゆっくりした時間は久しぶりだ。…ありがとう、。」
大好きなゼノ様の微笑み。
だけど月明かりのせいか、いつもよりも魅惑的に感じた。
お茶を飲み終わり、バルコニーに並んで立ち空を見上げた。
「ゼノ様は、月に似てますね。」
「そうか?俺はそう感じたことはなかったが…。」
「月は真っ暗な闇を柔らかく照らす光です。ゼノ様がシュタインに光を照らしているんですね。」
すると、ふっと彼は微笑み私を優しく引き寄せた。