第9章 月の魔力*ゼノ*
「遅いなぁ…。ゼノ様…。」
お茶の準備を整え、ゼノ様のお部屋で待つ。
婚姻関係を結んでからは、お互いの部屋を自由に行き来している。
何となく今日の月は二人で初めて見る瞬間を共有したくて。
外は眺めず、じっと我慢。
すると、コツコツと廊下を歩く音が聞こえてきた。
私は待ちきれなくて、ゆっくり扉を開いた。
すると、やはりそこにいたのはゼノ様で。
彼は少し目を見開いて私を見つめ、優しく微笑み部屋に入った。
「お帰りなさい、ゼノ様。」
私は彼の体に腕を回して、疲れた彼を労うようにそっと抱き締めた。
「ただいま。…待たせてしまってすまなかったな。」
「いいんです。…あの、これから少しだけ私にお時間を頂けませんか?」
「あぁ、もちろんだ。」