第9章 月の魔力*ゼノ*
翌日。
シュタイン城の前に馬車が到着し、ユーリに手を借りてシュタインの地に足をつけた。
すると、右目を眼帯で隠した若き国王が穏やかな表情を浮かべ出迎えてくれた。
「、よく来たな。疲れてはいないか?」
「ゼノ様お久しぶりです。…お会いできてすごく嬉しいです。」
「俺もだ…。」
久しぶりの大好きな人。
本当は飛び付きたいほど嬉しかったけれど、私は彼の妻であり、ウィスタリアのプリンセス。
立ち居振舞いには気を付けなくちゃ。
すると、ゼノ様が左腕をすっと私に差し出してくれた。
「…これで我慢してくれ。」
私にしか聞こえないほどの声で、すっかり見透かされたような囁き。
口許に笑みを浮かべるゼノ様を見つめると、私の心がトクンと音を立てた。
私は彼の腕に寄り添い、城へと導かれた。