第1章 あなたしかいない*ルイ*
急に縛られていたものから解き放たれ、後ろから別の誰かに引き寄せられ肩を抱かれた。
「失礼いたします、シーザー公爵。彼女は私の婚約者にあたりますので、お引き取り頂きますか?」
その声が聞こえた瞬間、待ちわびていた彼だと確信した。
「ルイ!」
私は思わず抱き付いてしまった。
「…申し訳ございませんでした。出過ぎた真似を…。本日は失礼させて頂きます。」
ばつが悪そうな表情を浮かべ、シーザー公爵はバルコニーから室内へと戻っていた。
「ルイ…ありがとう。」
「、遅くなってごめんね?…間に合って良かった。」
ルイが腕を私の腰に回し、強く抱き締めてくれた。
「恐かった…。」
ほっとしたのか、急に我慢していたものが溢れ出した。
涙がポロポロ流れて止まらない。
すると、彼の唇が私の頬を流れる滴をすくってくれた。
「もう大丈夫だから。…ちゃんと俺はここにいるから。」
彼の綺麗な手が私の頭を優しく撫でてくれた。
すっかり涙は引いて、久しぶりの彼の温もりや香りを感じていた。
「…部屋に戻ろうか。ジルに話してくるから待ってて。」