第1章 あなたしかいない*ルイ*
舞踏会当日。
招待客が音楽に身を任せながらダンスを楽しむ中、続々と貴族の方々がご到着された。
「本日はお忙しい中、お越しいただき有り難うございます。」
「いえ、ウィスタリアのプリンセスには是非ともお目にかかりたいと思っていたのですよ。」
そう発したのはシーザー公爵という若くして勢力を拡大している方。
「そうですか…。光栄でございます。」
シーザー公爵の言葉が少しひっかかったけど、私は何食わぬ顔をしてドレスを両手で掴み、軽くお辞儀をした。
ふとダンスフロアに目を移す。
ルイとのダンスを思い出して何だか切ない気持ちになってしまった。
「…プリンセス。大丈夫ですか?表情が曇っていますよ。」
隣にいるジルに声をかけられ、はっとした。
「ごめんなさい。大丈夫です。」
いけない。いけない。
「プリンセス、私と踊っていただけますか?」
シーザー公爵からのダンスのお誘いを受け、差し伸べられた手を取り、ダンスフロアへと足を運んだ。