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イケメン王宮*Short Stories

第37章 視線の先に*ルイ*


「アラン様、お疲れ様です。」

「あぁ、そっちもお疲れ。…それ騎士団の台所に持っていくのか?」

はい、と頷くと、アラン様は私が両手で抱えていたかごに手をかけて、自分の手元に収め、そのまま台所の方へと歩き出した。

「アラン様!私が持っていくので…」

「どうせ部屋戻る時通るから。…甘えとけ。」

嬉しいけれど、さすがにメイドが騎士団団長に仕事を代わってもらうわけにはいかない。

「そんな訳にはいきませんよ…。」

「…じゃあこれ持って。」

困って眉を寄せる私を見かねて、アラン様はかごに入っていた小さな袋を私に手渡した。

「これならお前も仕事サボったわけじゃないし、いいだろ?」

「…ありがとうございます。」

アラン様はよくこうして声をかけてくださって、お忙しいのに仕事を手伝ってくださる。

城に仕える私達使用人にも気を配ってくださるぶっきらぼうなようで優しい方。

「…お前さっき何で庭園眺めてぼんやりしてたんだよ。」

「え?」

見られてしまっていた恥ずかしさをごまかしたくても、顔がみるみる熱くなっていった。

「…考え事です。メイドも色々あるんですよ?」

「…へぇ。」

そこで話が途切れたことに一息ついていたら、いきなり核心を突かれた。

「ルイのことか?」

「…!」

隠していたつもりの想いが他の人に知られているかもしれないという事実で、胸がぎゅうっとつぶされそうになった。

秘密を隠したくて何も答えずにうつむいていると、アラン様が言葉を続けた。

「…、俺はお前が好きだ。…だから気付いたんだよ。」

その一言にはっとした。

ルイ様がいらっしゃる時は無意識にルイ様を探していて、人だかりの中でもまるでオーラを纏っているかのように特別に見えた。

恋をするとフィルターがかかるのは、もちろん私だけではない。

戸惑いが大きすぎてようやく絞り出したのはこの一言だった。

「…ごめんなさい。」

アラン様の顔を見ることができなくて、体を縮こませていた。

「…冗談。」

驚いて顔を上げると、アラン様は口元に笑みを含んでいた。

「からかっただけ。…それ持って行くわ。…そのままじゃ変わんねぇぞ?」

そう言って前へ進んでいくその背中を見送るしかできなかった。

あの目は冗談を言っていなかった。

アラン様の優しさが有り難くもあり、切なかった。
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