第37章 視線の先に*ルイ*
混乱する頭の中にあるのは、アラン様へ申し訳ないと思う気持ちと、それでもルイ様が好きだという気持ち。
「そのままじゃ変わらない」という言葉が重く響く。
一つため息をついて仕事に戻ろうとした時、ルイ様が少し焦った様子でこちらへ向かってきた。
「…。」
ルイ様から名前を呼ばれたことは数えるくらいしかなくて、嬉しくて頬を染めつつもルイ様に声をかけた。
「ルイ様…。何かお困りですか?」
「…君とアランが話しているのを見かけたから。」
「え…?あ、はい…。先程までいらっしゃいました。アラン様にご用事でしたか?」
「いや…。君と話がしたかったんだ。」
「…私、ですか?」
予想外の答えに目を丸くしていると、さらに予期していなかった言葉が耳に飛び込んできた。
「…アランから君への気持ちを伝えられた?」
好きな人に知られてしまっていたショックで崩れそうな心を何とか支えて、頷いた。
「はい…。ご存知だったんですか?」
「何となく。君を見てると、君のことを見てるアランがいることが何度もあったから。」
「え…?」
「君を見てた」?
「何度も」?
恋をする相手を自分の視界に入れたいと願うのは…私だけじゃない。
「…俺も君が好きだよ。白い花の話を庭園でしたこと覚えてる?」
「はい…。」
「あの時君に自分と同じものを感じて、君のことが気になるようになったんだ。…俺の恋人になってほしい。」
同じ時に恋をして、想いが通じあった喜びがじわりじわりと込み上げてきた。
ただ、この恋は楽な道のりではない。
「ルイ様…私もルイ様をお慕いしています。お気持ちはとても嬉しいですが、私はメイドです。…身分の違いがルイ様にご迷惑をお掛けしてしまうかも……。」
「…うん。でも、俺は君と一緒に乗り越えたい。…側にいてほしいんだ。」
そっと手を取られて、透き通る青の瞳を覗くと泣きそうな自分の顔が映っていた。
すると堪えきれなくなった涙がポロポロと溢れだしてしまって、拭っても拭っても止まらない。
「…。」
優しく抱きとめられると心が落ち着いてきた。
いつも視線の先にいた彼が、今は視界いっぱいに映っている。
「…よろしくお願いします、ルイ様。」