第36章 ブルー・ローズ*ゼノ*
城の前に到着し、ゼノ様が先に馬車から降りて、私の手を取りエスコートしてくださった。
城の中に入ると、国王様が直々に出迎えて下さった。
「ゼノ、、よく来たね。」
「この度はお招き頂き有り難うございます。」
二人並んでお辞儀をして、顔を上げると国王様は優しく笑みを浮かべていた。
「そんなに畏まらないでくれ。久しぶりに二人の元気な顔が見られて嬉しいよ。」
「私達もです。お元気そうで何よりです。」
すると、国王様は眉を下げて次の言葉は紡ぎにくそうにした。
「折角来てくれたのに申し訳ないが、急な公務が入ってしまったんだ。夜の会食までには終わる予定だから、二人で街を散策してみてはどうかな?ゆっくり見たことはないだろう?」
確かに、何度かフィオーラを訪問したことはあったけれど、ゆっくり街を散策したことはなかった。
「、お前が良ければ街に出てみようと思うのだが、どうだ?」
「あ、はい!私も行ってみたいです。」
「部屋に案内するから、荷物を置いて着替えていくといい。…二人の顔はあまり知られてはいないから、ゆっくりデートしておいで。」
「デート」という言葉に胸が高鳴り、頬が熱くなる私を見て、ゼノ様はふっと微笑み、国王様はそんな私達を見て優しく笑みを向けてくれた。
国王様が公務へと戻り、滞在する部屋へ案内されるとそれぞれ身支度を整えた。
私服に着替えたゼノ様に、せっかくのデートなので一つお願いをしてみることにした。
「あの…ゼノ様。一つお願いがあるんですけど…。」
「なんだ?」
「…眼帯を外していただけませんか?」
あくまで「他国の国王とプリンセス」ではなく、「恋人同士」として城下に行くので、眼帯をすることで少し目立ってしまうのではないかと思った。
顔に少し戸惑いの色を浮べて返答を躊躇うゼノ様に、私は慌てて声をかけた。
「すみません。もし難しいのであれば、そのままでも…。」
言葉を続けようとすると、ゼノ様は私を見つめて口を開いた。
「わかった。ただし、俺からもお前に交換条件として頼みがある。」
「何ですか?」
「敬称を付けないでくれ。普通の恋人同士としては、少し不自然だからな。」
「…わかりました。」
ゼノ、なんてお呼びしたことないけれど、私もお願いを叶えてもらうのだから、頑張らないと。