第30章 甘い誘惑にご用心【甘裏】*ルイ*
「様、顔が赤いけど大丈夫?具合でも悪いの?」
公務も終わり、夕食後のティータイムの時にユーリが心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「大丈夫だよ。紅茶が温かいからかも。」
と、口では言ってみたものの実は公務を終えた後くらいから、妙に身体が熱い。
でも気怠さはないし、熱があるというわけでもない。
もうすぐルイが来る時間なのに…と焦れば焦るほど身体の火照りはひどくなるばかり。
ドレスが肌に触れるのにも敏感になり、擦れる度にぎゅっと身体を縮こませた。
その時扉が叩かれる音がして、ユーリが扉を開いた。
そこに立っていた彼の姿を瞳が捉えた瞬間、鼓動が高鳴り身体がより一層熱くなった。
「様、お待ちかねのルイ様だよ。…じゃあ俺は失礼するね。」
ユーリがクスクス笑ってティーセットを下げて部屋を出ていくと、ルイは私の元に歩みを進めた。
「、遅くなってごめん。」
その一言と共に、ルイの温もりが身体を包んだ。
いつもなら抱きしめられると安心するのに、今日は触れられただけで心拍数が加速する。
そして無意識に過る思いを知られたくなくて、私は自分からルイの胸に手をついて離れた。
「…?」
私の様子に疑問を浮かべてルイは心配そうに私に視線を向けた。
「あ、あのね…今日少し具合が悪くて…。」
「…大丈夫?無理しない方がいい。…もう休もうか。」
咄嗟についてしまった嘘なのに、ルイは優しく私の体を横抱きにしてベッドまで運んでくれた。
既にネグリジェ姿だったので、そのままベッドに寝かせられた。
浴室へと向かうルイを見送り、ベッドの中で私は嘘をついてしまった罪悪感に打ち拉がれ、収まらない身体の疼きを必死にこらえていた。