第26章 チェックメイト*ゼノ*
「、眠れないならチェスの相手でもしてくれないか?」
「え…ゼノ様のお仕事のお邪魔になりませんか?」
「そろそろ目処をつけようと思っていたところだ。…ユーリやアルと練習しているのだろう?」
そう。少しでもゼノ様のお側にいたくて、ルールを教えてもらってからは、時間を見つけて二人に練習相手になってもらっていた。
「…じゃあ、お願いします。」
ボードに黒と白の駒がそれぞれ16個。
一手一手悩みながら駒を動かす私に体して、ゼノ様は時間をかけずに自分の番を終える。
手応えがなさすぎて、つまらない思いをされていないか心配になる。
チラチラと様子を窺う私の様子に気が付いたのか、ゼノ様はそっと私の頬に触れた。
「、気に病まなくていい。…俺はお前と時間を共有できることを嬉しく思っている。」
私を気にかけてくださる優しさを、その言葉から、頬に伝わる温もりから感じられた。
「…ありがとうございます。」
その後懸命に駒を進めるも、ゼノ様の一言で遊戯は幕を閉じた。
「…チェックメイト。」
「…あ!」
ボードの上の私のキングは、ゼノ様のクイーンから逃れられなくなっていた。