第26章 チェックメイト*ゼノ*
いつもとベッドが変わってしまったからか、横になってしばらく経つのに全く瞼が重くならない。
もっとも先に寝る気なんてなかったのに、私を気遣い寝かしつけに見えた彼のなすがままでこの状態。
公務がどれだけ夜遅くになっても私は彼を待っていたいのに。
ベッドの上で寝返りを打ったり、体勢を変えてみたりしてもどうにも落ち着けない。
何だか喉が渇いてきたので、台所へ飲み物を取りに行こうと起き上がった。
「…そうだ。」
台所で二人分のティーセットを用意して、トレーに乗せて彼の部屋へと運んだ。
夜も更けて静けさが広がる廊下に扉を叩く音がやけに響く。
ゆっくりと扉が開かれると、少し驚いた表情で彼が迎え入れてくれた。
「ゼノ様、夜分遅くにすみません。」
「どうした?眠れないのか?」
「はい…。紅茶を淹れたので、ご一緒にいかがですか?」
「頂こう。」
ユーリに紅茶の美味しい淹れ方教えてもらっていてよかった。
公務でお疲れのゼノ様に、ほんの僅かでも安らぎの時間をお渡しできるから。
ふんわりと湯気を立てる紅茶に口をつけたゼノ様は、目を細めて微笑んでくださった。