第26章 チェックメイト*ゼノ*
お風呂に入られているゼノ様を寝室で待つ。
起きていたいからベッドに腰をかけているのに。
意識がたまに途切れ、顔がかくんと下を向く。
瞼が次第に重くなる。
…チェスで頭を使ったからかな。
こんなことなら、カフェインが入っていない紅茶を選ぶんじゃなかったな。
眠気に抗ったのも虚しく、私の意識は夢の中へと旅立った。
「…?眠ってしまったのか…。」
呼び掛けにも気付かずに寝息を立てて眠る私の身体をゼノ様は抱き上げて、ベッドに寝かせシーツをかけた。
私は無意識に隣に横になるゼノ様にすりよっていた。
右腕を私の頭の舌へ入れて、片手で私の髪にゼノ様は指を通した。
「お前が眠る姿だけで、安らぎを感じる…。」
ゼノ様は前髪の間から開かれていた私の額に唇を寄せた。
「、俺に気を遣いすぎるな。…もう既にお前に捕まっているのだから。」
そう言って私を抱き締めると、ゼノ様は眼帯を外して両目を閉じた。
すると、まもなく二人の穏やかな寝息が重なった。
まるでチェックメイトを宣言された王のように。
王は女王の元へと引き寄せられる。