第24章 つかめる赤糸は一本だけ/アラン*ルイ
日々公務と勉強で慌ただしく過ごし、その間だけは刻々と近付く舞踏会のことを忘れられる。
馬術の時間が終わり、私はアランと厨舎で馬たちのブラッシングをしていた。
「お前、ブラッシング上手くなったな。」
ブラシを馬の毛並みに滑らせる私の手つきを、アランは満足そうに眺めていた。
「本当!?アランの教え方が上手いからだよ。」
「バーカ。褒めても何も出ねぇぞ。」
くしゃり、と頭を撫でられると、何だか誇らしげな気分になった。
部屋まで送ってもらう道中は先程とは異なり、会話が少なくなり静かな時間が流れていた。
沈黙があまり気にならなくてそのまま廊下を歩いていると、アランが私の手をとった。
「…アラン?」
突然の仕草に、胸の中でトクンと音がした。
「…お前、次の舞踏会で次期国王を決めるんだって?」
アランがあまりにも真っ直ぐな視線で私を見つめているので、目を合わせられず俯きがちになって口を開いた。
「うん…。」
「もう決めたのか?」
即答できずに、そのまま黙って目線を下に向けていた。
すると腕を引かれ、気付けば私はアランの胸に顔を埋めていた。
「…俺を選べ、。」
「アラン…。」
顔を上げれば視線はぶつかり、想いが籠った言葉を贈られた。
「もう一度言う。俺はお前が好きだ。…俺がずっとお前を守るから。」
私を抱き締めるアランの腕には、想いの強さを表すかのようにさらに力が込められる。
アランの真紅の瞳が、熱を帯びていた。