第20章 溢れた言葉*ジル*
「水を持ってきますので、休んでいてください。」
服の裾からの手を離し、そっと包み込み彼女の顔のそばへ戻した。
「ジル…。」
浅い呼吸の合間に、彼女は私の名前を呼んだ。
「何ですか?」
ベッドの脇で膝まづき、横たわる彼女と目線を合わせた。
「…行かないで。…側にいて。もっと二人でいたいの…。」
瞳が少し涙がちになりながら、うわ言かのようにこぼれ落ちた言葉。
それは今だけのことを指しているのか、今までのことを指しているのか。
プリンセス、そして教育係兼側近の私自身それぞれの公務に追われ、ここのところゆっくり二人で過ごす時間が取れなかった。
彼女は私に気を遣いすぎるせいか、あまり感情的に本音を漏らさない。
酔っているからか、無意識に口から漏れてしまった本音のように感じられた。
「…そうですね。この頃こうしてあなたに触れていなかったですから。…私も寂しい、と思っていたのですよ?」
本音を溢した唇を指でなぞり、そこへそっと唇を寄せた。
唇を離すと、彼女はふわりと柔らかく微笑んでそのまま瞳を閉じた。
「…このまま記憶がないあなたを抱くのは無骨ですからね。これくらいは大目に見てください。」