第20章 溢れた言葉*ジル*
私の腕の中にいるのは、我が国ウィスタリアのプリンセス。
彼女をあてがわれた部屋へと運び、ベッドへとゆっくり下ろした。
「大丈夫ですか、?」
「……はい。」
彼女の口から溢れたのは、心配をかけたくないと言う強がりだということくらいすぐに分かった。
いつも話す相手の目を真っ直ぐ見つめて話す彼女が、そんな余裕もないほどにぐったりとしている。
「お酒の丁寧な断り方もお教えしておかないといけないですね。」
艶やかな髪に指を通すと、とても滑らかで指通りがいい。
今日は他国での舞踏会に招待されており、少し遠方の国ということで一晩お世話になることになっていた。
事前に親交もあり、特にプリンセスは女王にお気に召されており、名産のワインを多く勧められていた。
上手く断れなかったのか、私が挨拶を終え戻った時には頬は上気し、目はどこか虚ろになっていた。
許可を頂き、に付き添いダンスホールを出ると、その瞬間私に寄りかかった。
部屋を出るまでプリンセスとしての振る舞いを貫いた自覚に感心しつつ、すっかり一人の女性の顔に戻った彼女を抱き上げた。
髪をといていた手を彼女の頬に添えれば、無意識なのか彼女は私の手に自分の手を添え、すりよるように顔を付けた。
「全く…可愛らしいですね、あなたは。」
一人の女性にここまで心酔するとは、自分でも予期していなかった。
少し息苦しそうにする彼女に水でも持ってこようかと手を離し立ち上がろうとした時、服の裾を引っ張られた。