第14章 フライングハロウィン*アラン*
部屋に戻ると、ユーリがお茶の準備をして待っていてくれた。
淹れてくれた温かい紅茶がじんわり身に染みる。
「あ、もうすぐハロウィンだ。」
「もうそんな時期か…。早いな。」
公務の確認のために開いた手帳を見て、ふと10月も半ばに差し掛かったことに気が付いた。
「なんか懐かしいなぁ…。」
しみじみと懐かしさを噛み締める私に、アランは興味深そうに尋ねてきた。
「城下にいた時は何かやってたのか?」
「うん。街の皆で仮装して、子供たちにお菓子をあげてたの。子供たちがすごく喜んでくれて…楽しかったなぁ。」
プリンセスになった今は、もう一緒にハロウィンをお祝いすることは出来ない。
その考えがよぎると、ちょっと物悲しくなって表情に影を落としてしまった。
「…今年もやりに行くか?」
「え?でも…当日は公務だし…。」
31日は、朝から隣国の国王陛下との会談、ウィスタリアに戻ってきてからはジルの礼儀作法のレッスンが入っている。
「来週馬術の練習入ってるだろ。少し早いけど、その時間なら行けるんじゃねぇの?」
アランからの思わぬ提案が、私の心を弾ませた。
「…いいの!?」
「まぁ、一日くらいならいいんじゃね?先にジルには話しておかないといけないけどな。」
「嬉しい…。アランありがとう!」