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七色の雫 ~生きる道の再構築~

第10章 『分解』   3



「よかったな、エドワード・エルリック!」
「……なんつーいいかげんな…」

俺のことばに大総統は、ほほ笑む。
ビーネの奴は静かに俺の隣に戻ってきて、書類を俺の荷物の上に置いた。

「君の各地での活躍を見る限り、問題はない。これからも期待しているよ、鋼の錬金術師君。もちろん、君もだ。」

お褒めの言葉に奴は軽く頭を下げただけだった。
大総統はそれを咎めず、言葉を続けた。

「南部にはまた、ひと騒動起こしに来てたのかね?」
「いや、いえ。錬金術師の師匠がダブリスにいるんで、会いに来ただけです。」
「ほぉ。君の師匠となると、かなりの者ではないのかね?」
「そりゃもう、すごいですよ。」

色んな意味で。
スパルタ教育の数々を思い出し、身体が反射的に震える。

「国家錬金術師に勧誘しに行ってみようか。」
「いやー、止めた方がいいです。行くなら、それなりの戦力を持って行かないと……」

俺の言葉に疑問符を浮かべる、大総統と少佐。
みんなはこの話題の残り一名である、ビーネに説明を求める。

「我々を全力投入するぐらいかと。」

そりゃもうにっこりと笑って言ってのけた。
すぐにビーネの奴が退室を申し出てくれたおかげで、これ以上巻き込まれることはなかった。

「しっかし、本当にあんなんでいいのかよ。」
「査定の事なら気にしないでいいよ。研究局に行ったら大総統と同じことをしようと思ってたから。」
「……お前もか。」
「だって、面倒だからね。」

爽やかにそういう事を言うのは、アメストリス軍の上層部の風習なのだろうか。
ほんとに、こんな奴らが上官で大丈夫なのかよ…。

「列車は明日一番でいいね?」
「あぁ。早いとこ戻らないとな。」

今日の宿は、ビーネの名前で借りた、この町一等のホテル。
部屋はスイートではないにしろ、広かった。
食事も豪華だ。

「ごめんね、エドワード君。堅苦しい食事になって。」
「別に。うまいからいいよ。」
「外は最近物騒らしくてね。」

奴がそう謝るのは、食事を部屋で取っているから。
他の人はおらず、給仕係すらいない。
男二人での食事なんて、今後は遠慮したいね!



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