第1章 『出会い』
寝起きは悪い方ではない。
しかし、空が白み始めた時間に叩き起こされれば誰だって多少機嫌は悪いだろう。
「…すまない。」
「わかってますよ。わかってますから。」
先ほどから会話と言えばこればかり。
髪は櫛も通さず縛り押さえ付けた。
ファルマンさんの運転で呼び出された現場に着くと、朝が早いにも関わらずぽつぽつと野次馬が見て取れた。
「ロイ。」
「来たか、ハニー。ヒューズ中佐とアームスロトング少佐はみなかったかね?」
「宿から直接来たから、見てないよ。それで…。」
ロイと連れだって中に入れば、ぱっと見でただの殺人事件ではないことがうかがえた。
「潰れた。と言う表現よりも、」
「破壊された、と言った方が正しいだろう?」
「うん。」
〝破壊された″タッカーさんと合成獣ニーナ。
その様子を見ているとにわかに玄関が騒がしくなる、ロイが言ってた二人が到着したんだろう。
「少佐、それと父さん。」
「うぉお!ハニー!会いたかったぞぉぉお!!」
ガシィ!と音が聞こえそうな父親の抱擁。
………はぁ。
「お久しぶりです、少佐。」
「うむ、久しぶりですな。ビーネ少佐。」
挨拶もそこそこに、中央からの二人を加えて現場検証が始まった。
「スカー(傷の男)?」
「あぁ、素性がわからんから俺たちはそう呼んでいる」
父さんが深刻そうに、渦中の人物の話しをする。
しかし、彼の腕には僕が抱えられている…。
「素性どころか武器も目的も不明にして進出鬼没、ただ額に大きな傷があるらしいという事くらいしか情報が無いのです」
「今年に入ってから国家錬金術師ばかり中央で5人、国内だと10人はやられてるな」
「ああ東部にもそのうわさは流れてきている」
酷く残忍な手口で殺人を繰り返す。
犯人の足取りが掴めないので、軍も焦りを見せ始めているところだ。
「信じられんかもしれんが、それ位ヤバい奴がこの町をうろついてるって事だ。悪い事はいわん、護衛を増やして大人しくしててくれ。ま、ここらで有名どころと言ったらタッカーと後はお前さんだけだろ?」
ハニーは俺が守る!と僕の肩をしっかり抱きながら燃えている。
……熱いわぁ。
「あれ?エドワード君は?彼も国家錬金術師……」
ぴしゃりと固まる現場。
最初に息を吹き返したのはロイだった。