第1章 『出会い』
「エドワード君。アルフォンス君。東方司令部へ戻ろう。」
「…ニーナは?」
「僕に許されているのは此処までだ…後の事は大佐が。」
僕は二人を連れて彼の家の外へ出る。
降り出した雨はまるで涙のようだった。
連れてきていた軍人二人を見張りに立て、代わりにエルリック兄弟を乗せ走り出す。
「出してください。」
「はい。」
沈黙が降りる車内。
これぐらいは想定済みだ。
降り出した雨は強くなる一方だ。
「大佐。」
雨に濡れた半長靴を大股で鳴らしながら、廊下の先に歩くロイの背中を呼びとめた。
彼の部屋に移り事実を報告し、国家錬金術師の権利を剥奪したと報告する。
ロイはすぐにタッカーの家に人を派遣し、自らもいそいそと動き始めた。
「いつ、気がついたんだね?」
「ずっと前からだよ。中将から彼の事を聞いた時からずっと。」
「そのために来たんだな。」
「そう、だね…。」
僕は僕で中将に報告するため、通信隊へ行き電話を借りる。
簡潔に報告をして、押収した銀時計を中央へ送る手続きを完了する。
「いつもだけど、後味悪いなぁ。」
タッカーさんと合成獣の事はロイに任せ、僕はホテルに戻って休むことにした。
明日はきっと、タッカーさんと合成獣を迎えに軍法会議所に勤める父さんとあともう一人くらい誰かが中央から来るだろう。
夕食を取って荷造りをして、シャワーを浴びてサッパリしてベッドにもぐりこんだ。