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七色の雫 ~生きる道の再構築~

第10章 『分解』   3


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「帰ったぞー。」
「ただいま。」

イズミさんの家へ戻ると、二人はまだトレーニング室にいるようだった。
道中、アルの記憶を戻す手段を聞いたと言っていたイズミさん。
…きっとショック療法を試すのかもしれない。

「あっ、お帰りなさい師匠。体調は大丈夫ですか?」
「あぁ、先生にも顔色がいいって言われてな。それにお前の記憶を戻す手段も考えついたぞ。」
「え!どんな方法ですか?」
「名付けて『ショック療法』だ」

イズミさんは流れる動作で、手近にあったバットを手に取る。
アルフォンスはきょとんとした顔でその様子を窺う。
フ。とイズミさんは彼の側でそれを振り上げ、思い切り振りおろした。

「せっ、師匠!いきなり何するんですか!」
「何って、お前の記憶を取り戻そうとしてんのさ。」
「そんな無茶な…」
「記憶喪失を直すには強いショックを与えると良いらしい。」

たいして反応を示さなかったのは、やはり鎧の身体で痛みを感じないからだろうか。
じりじりと再び距離を詰めるイズミさんから、じりじりと距離を離すアル。
何となくエドワード君が大人しいなと思ったら、ショックを受けたのは何故か彼の方だったようだらしい。

「ど、どうしたの兄さん?」
「……今年の査定忘れてた。」

衝撃の事実。

「査定?」
「国家錬金術師は年に一回の査定に来ないと、資格を取り上げるんですよ。」

イズミさんは僕の言葉に何かを思いついたようで、ぽん!と手を打つ。

「よっしゃ!これを機会に、軍の狗なんてやめちゃえ、やめちゃえ!どれ。私が軍に電話しといてやろう!」

受話器を手に取り、ダイヤルを回す。
エドワード君はそんなイズミさんを必死に止める。

「やめてーーーー!」
「ちっ。」

舌打ちをして心底悔しそうな顔をするイズミさん。
その手の受話器からは「はい、楽々軒」と昼食は出前に変更したのか食堂に電話していた。



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