第9章 『分解』 2
「お譲ちゃん!驚いて声も出ねぇか。かぁわいいな!」
「誰が、お譲ちゃんだって、えぇえ゛?!」
ふらりと傾く身体の反動を使って、当たれば昏倒するだろう威力の蹴りを放つ。
が、男は後ずさりかわした。
「ひゃぁ!怖いねぇちゃんだ!へっへへ!もう用はねぇ!さいなら!」
「「逃がすかぁ!」」
僕はポケットから紙を、エドワード君は両手を合わせ、男の進路に壁を作る。
「おー、すげぇ!でも。」
男はあろうことか壁に手をついて、まるでトカゲのように壁を這いあがる。
「俺もすげぇ!」
あっという間に壁を登り切り、さいなら~。と壁の向こうに消えて行った。
「……なにあれ。」
「さぁ、僕にもさっぱり。」
ぽかーん。として壁を見つめるばかり。
アルフォンスがカチャンと頭を元の位置に戻して、エドワード君を戦慄させる言葉をもらす。
「すっかり遅くなっちゃったね。師匠、怒ってるだろーなー。」
「やべーーー!早く行くぞ!」
ばたばたと走り去る兄弟。慌しいなぁ。
僕は一応、壁を元の道路に復元しておいた。
まぁ、違うと言われたら、エドワード君の所為にしておこう。そうしよう。
・・・