第8章 『分解』
すると、ガタガタ!と外から音が聞こえ、何事かと持っていた短剣を構えると、扉が開き見たことのある二人が飛び込んで来た。
「師匠!」
エドワード君が慌てて戻ってきて、本当に戻ってきた。と呑気に構えていると、イズミさんが予備動作もほとんどなく、「どの面下げて戻ってきた!」と、研いでいた包丁をエドワード君に向かって投げていた。
……バイオレンス。
「なーにが『師匠』だ!きさまらなんぞ弟子とは思わん!とっとと帰れ!」
「お…おち…おちつ…」
ガタガタ震えるエドワード君。
ははは。面白いな。
「ボクたち、元の身体に戻る手掛かりを得にここに来たんです!」
「手ぶらでは帰れません!」
「帰れ!」
「「帰りません!」」
「刻むぞ!」
「「刻まれても帰りません!」」
「帰れったら帰れ!」
「「イヤです!」」
エドワード君とアルフォンス君はその場に膝をつき拳を地面に打ちつけ、真っ直ぐにイズミさんを見つめる。
固い決意と強い意志がなければ出来ない目だ。
「……ばかたれが。」
イズミさん、元から彼らを許すつもりだったんだと思う。
彼らの意志を確認するために……強い人だ。
僕は出しっ放しの短剣を鞘に仕舞い、彼らを送りに行っていたシグさんが壁に刺さった包丁を抜き、僕の方を見て困ったように笑みを交わす。
「アルは真理を見なかったんだね。」
イズミさんがキッチンからこちらに来ながらアルフォンス君に言う。
「あ…えーと、『真理』って、何のことかさっぱり…」
「ふぅん…ショックで記憶が飛んでるのかねぇ……?」
未だにその場に座り込んだままの二人。
僕は話しを始めるだろう彼らにソファーを譲るべく、立ち上がる。
「エドワード君、アルフォンス君。座りなよ。僕は外で」
「ビーネ。アンタもだ。」
「え?」
包丁こそ向けられなかったものの、鋭い視線を頂いた。
「お前も人体錬成をしているのなら、少しくらい知識があるだろう?こいつらに用事があるって言うのは、そういうたぐいの用事だろう?」
はい、ご明察です。