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七色の雫 ~生きる道の再構築~

第8章 『分解』




「イズミさんは、もしかして…お子様を錬成しようとなさった?」
「あぁ。中を持って行かれた。」

それで、見た目には判別がつかないってことか。
その時に内臓を通行料として扉の中を見たんだ…。
中に入って飯の支度を手伝ってくれ。と言われ、皿を出したり手伝った。
テーブルには並べないが、エドワード君とアルフォンス君の分もちゃんと数に入っていた。

「ビーネ。すまないが湯をくれないか!」
「あ、はい!」

スープを作るのに水を沸かすのは面倒と見た。
ポケットを漁り、錬成陣を書いた紙を取り出し、鍋に入った水をお湯へと錬成した。

「ほー。便利な錬金術だな!」
「えぇ。重宝しますよ。」

メイスンさんが感心して鍋を覗く。
イズミさんは、満足と言ったように湯の温度を見てほほ笑んだ。
はは…何で僕は国家錬金術師なんてやってるんだか。

「ビーネ。なんでわざわざ錬成陣なんか使うんだ?」
「目立ちたくないんで…」

目立ちたくないから、陣なし錬成は行わない。
目立ちたくないから、錬金術は使わない。
目立ちたくないから、良い子で過ごす。

「ふぅん。」

イズミさんには気がつかれただろう。
自己紹介をした時、僕は国家錬金術師、とは名のらなかった。
食事の支度が一段落し、僕はリビングで短剣を磨き、イズミさんはキッチンで包丁を研ぐ。

「イズミさんは、あの兄弟の錬金術の師匠なんですか?」
「まぁな。錬金術と体術といろいろだな。」
「そうですか。いい先生です。ぜひウチに来てほしい。」
「ははは!軍人にはならないよ。」
「教育のならない部下をしごいてもらいたいですよ。」
「若いのに苦労してるねー。」
「優秀なお守がいるのでそれなりに楽です。」
「アンタみたいなひねくれ者、どうやって御すのか聞いてみたいもんだよ。」
「ははは」

しんとした同じ空間にいるのが初対面の人ともあれば気まずい。
だからとにかく話をした。
関係ない話を適当に。



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