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七色の雫 ~生きる道の再構築~

第8章 『分解』





―――――『叔母上!見てください!』

幼い僕の掌には、氷で作ったバラの花。
母は僕が生まれてすぐになくなった、だから記憶はない。
父の妹が母親の代わりをしてくれていた。

―――――『まぁ、さすが、兄さんの子だわ。』

5つの子供には到底なし得ないような、精密で正確な錬金術の技術。
卓越した錬金術の先天的センス。
次期リーダーの座は決まっていたような物だった。

―――――『くだらない。必要のない物に錬金術を使用するな!バカ者!』

バラは一瞬にして砕け散る。
父の錬金術は湖ほどの水も操ってしまうものだった。
けれどそれができるようになったのは父が成人を越してから。
それが出来るようになって初めて、リーダー候補として先代のリーダーに目を掛けてもらっていた。

―――――『ビーネ。あなたは悪くないわ。兄さんはね嫉妬してるのよ。』

嫉妬。
ただそれだけで済めば良かったんだ。
けれど、父の側近は僕を悪魔の子だの化け物だのと、虐めた。
記憶にない母の事も貶した。
けれど、幼い僕にはまだまだ足りないから、僕は嫌われているんだと思った。

―――――『頭が盗賊に襲われた。』

交渉に出かけた父と数人が、山賊に遭遇し殺された。
みんなが悲しみにくれる中、僕は父を喜ばせようと父を作ることにした。
けれど、扉をくぐり、真理に身体を持って行かれ、父を錬成する事は失敗に終わった。

―――――『通行料に貰って行くよ。』

大きな錬成陣を書けば、大きな力を得られると思った。
不穏な錬成の反応に、仲間が全員集まった。
円の中心で倒れる僕にみんなが集まる。

―――――『なんてことを……!』

叔母上の悲しむ顔を見たのは初めてだった。
ひゅ、ひゅ。と目前に死が迫っていた。
ごめんなさい、ごめんなさい。と声にならない声で謝りながら、僕は両の手を錬成陣に置いて『助かりたい。』と願ってしまった。

―――――『なんだ、また来たの?仕方ないな身体は返すよ。でも、これらは通行料で貰って行くよ。』


真理の言う、これら。
それを理解したのは、白い天井と見たこともない青い服を着た人たちのいるふかふかのベッドの上でだった。

―――――『少年。何があったか話す事はできるかね?』








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