第8章 『分解』
「しかし、殺伐とした旅をしてるねぇ。」
メイスンさんが心配半分好奇心半分と言った様子でしみじみ言う。
「そんな、酷いことばかりじゃないですよ!」
「俺たち、ラッシュバレーで出産に立ち会ったもんな!」
「師匠!ボクたち赤ん坊を取り上げるのを手伝ったんですよ!」
嬉々として彼らの師匠、イズミさんに自慢するガキのように目を輝かせる、エルリック兄弟。
「バッカおめー!オレ達うろたえてただけじゃん!」
「あはは!でも家族が協力して母親も命をかけて、みんなに祝福されて人間は産まれて来るんですね」
「…そうだよ。お前達もそうやって生を受けた。自分の命に誇りを持ちなさい」
……。
イズミさんの優しい表情。けれど、その下には憂いの表情も見て取れた。
「そう言えば、師匠のとこは、子供は居ないですけど…」
「エドワード君!」
エドワード君のもっともな質問をメイスンさんが慌てて制止した。
やはり、イズミさんには何かしらの言い難い事実があるのだろう。
「あー…ほら、あれから君達の錬金術も進歩したろう?修業の成果を見せてくれないかなぁ」
苦し紛れのメイスンさんの提案。
しかし、エルリック兄弟は彼の言葉に流される。
「あぁ!それならいくらでも!」
「ボクたちかなり大質量の錬成も出来るようになったんですよ!」
少しのことではしゃいでいた頃に彼らはここに来た事があったのだろう。
完全にガキんちょにもどってやがる。
楽しそうな彼らに僕も自然と口角が上がる。
「そうだ!どうせなら表でドーンとやってやろうぜ!アル!」
「うん!師匠!早く早く!」
彼らの錬金術か。
そう言えば見たことなかったかもしれないな。