第7章 『理解』 5
「顔色が悪いな。」
「この状況で良かったら、部下にひっぱたかれてるよ。父さんに会って行くか?」
「あぁ。」
生きているとも死んでいるともとれる言葉。
ビーネの横には可愛らしい女性が付きそう。
「アリス。ヴィエラは大丈夫そうですか?」
「ううん。アレイとヴィンズが側にいるけれど、ご飯も食べないって。」
「…ヴィエラを連れて行ったのは間違いだったかな。」
「それは無いよ!お父さんの最後、一緒に居られたんだから。」
女性に励まされるビーネが、こんな状況ではなかったらどんなに羨ましかったことだろう。
今は少しでも現実から目を逸らしていたい。
連れてこられたのはやはり病院。
廊下の先に小さな子どもと母親らしき人がベンチに座っているだけだった。
「リザさん。アリスとここで待っていてもらえますか?」
「えぇ。わかったわ。」
ビーネについて母親と子供に近づいて行く。
「ロイ、こっちは僕の母さんと妹のエリシア。母さん。父さんの友人のロイ・マスタングさんだ。」
「あなたが…マースがいつもお世話に。」
静かに挨拶を交わし、ビーネは母親と妹を中尉達の方へ向かわせ、飲み物でも飲んでおいでよ。と人払いを済ませた。
「ロイ。叫ぶんじゃねぇぞ。」
「なに?」
ビーネの言葉に身構えた。
マスクをつけた私たちは、看護師に案内されて集中治療室へと入る。
中には数個のベッド、すべて埋まっていた。
そして、その中に一際多くの機械が取りつけられたベッド。
「……っ!」
息が詰まった。
酸素吸入器を付け、まるで血の気をすべて失ったかのような顔をしたヒューズ。
本当にヒューズか?
「父さんだ。」
ビーネが私の心を読んだようにそう言った。
こけた頬に青白い肌、身体へ視線を移せば、妙に胸や腹が強調されて見えた。
足の方へ視線をずらせば、片足を失ったのだろうそこにあるべき膨らみがなかった。
「輸血を受けてようやくだ。両腕と片足。片耳も失った。意識は戻ってないが、なんとか命は繋がっている。」
「…くっ…!」