第7章 『理解』 5
「おんやぁ?焔じゃないか。なにしに来たんだい?」
メガネを掛けた背の高い女性が無遠慮にこちらの顔を覗き込んでにやりと笑う。
「ビーネ・ヒューズに会いに来たのだが。」
「ビーネに…ご用件は?」
「父親が亡くなったと聞いてな。」
何事にも動揺しないと聞く彼らが、私の言葉にピクリと反応した。
「うーん。これからエイドス中将の葬式なんだ。よかったら参列してく?」
そこに来ればビーネに会えるとでも言いたげな、今会いに行くのはよせと圧力をかけているのか、判断しにくい声色だった。
参列する。と返事を返すと、なら一緒に行こうと共に行動することとなった。
「焔。今日は顔見せするには絶好の機会だと思わない?中将が亡くなったんだ、それに近しい人物が目白押しだよ。」
…この女。
「あ。もしかして興味なかった?」
葬儀に参列すれば、もちろんビーネの姿はあった。
軍の嫌われ者の監査司令部もずらりと顔をそろえ、そこに参列している軍人たちはひそひそと陰口をたたく。
「なんだか嫌な空気だな。」
「エイドス中将、それほどに嫌われていたのでしょうか。」
「もっぱら普通の軍人にとっては、死神みたいなものだからな。」
やっつけで形式ばった葬式は終わり、中将も早々に墓に埋められていた。
監査司令の人たちも形式的に花を手向け祈りを下げ、誰ひとり口を利かず、静々とビーネの周りに蠢いていた。
「ロイ。」
か細い声で名前を呼ばれ、振り返れば疲れた顔をしたビーネ。