第7章 『理解』 5
目の前にはなぜか、マリア・ロスさん。
「はっ!?」
「あなたも邪魔をするのですか!」
「じゃまも何も!」
「ヒューズ!やれ!」
やれって。
目の前にいるのはアームストロング少佐の部下だぞ!?
仕方なく短剣を抜き、彼女に向かって投げるも人間とは思えない速度で避けて、持っていた拳銃でこちらを撃ってきた。
「やめてください!」
やめる?何をだ。
目の前の状況はどう見たってあんたがやったとしか思えない。
じゃぁ…
「あんた、血が付いてないまっさらな服で何してたんだ?」
ドスの効いた声でそう問えば一瞬彼女の動きが止まった。
と、そこへバタバタと足音が聞こえ、アレイとヴィエラが到着する。
「そんなに血痕がなければおかしいですかね?」
そう言って彼女が自分の軍服をひと撫ですると、錬成反応にも似た感じで服が血で汚れた。
「錬金術師…?」
「マリア・ロスは錬金術師ではありません。」
冷静なヴィエラの声に止まりかけていた思考が回る。
ポケットから錬成陣の書いた紙を取り出し、周りの空気中に含まれる水分を彼女に向かって暴走させる。
「少佐!援護します!」
「いらない!二人は父さんと中将の手当てを!」
「わしはもういい!ビーネを援護しろ!」
そう叫んだ中将を横目で盗み見れば、腹部が蜂の巣のように穴だらけになっていた。
「さすがは、監査司令のエースですね。」
あれほどの水圧に押されたというのに、何処も怪我をしていないマリア・ロス。
生身の人間ならば何処かの骨が折れてもおかしくないだろう。
もう一度紙を取り出し、次は水をパチンコ玉大に形成し銃弾の様に撃ちだすが、彼女は一切それを避けずに体に受け、そして受けた傷を再生した。
「……きもっ!」
「ひどいですね。」
いったいどうなってやがる。