第6章 『理解』 4
ふむ。
段々と疑問がわいてくるな…。
疑問は当事者に会えば少しは分かるかもしれない。
僕は慌てて自分の執務室に戻り、ハンコを一式持ってくる。
「よし、じゃぁみんな。これを預けて置くから好きに使って。」
「……ビーネ。」
「僕は、疑問を解決するために当事者に会ってくるよ!」
きっと、中将がわざわざそんなことを言いに来たのは、僕に探ってほしいからだろう!
そうに違いない!
ぎゅう。とヴィンズの手にハンコを押しつけ、中将にビシッ!と敬礼をしてから、病院へ向かった。
「ロス少尉、ブロッシュ軍曹。大丈夫ですか?」
エドワード君の病室の前には二人の軍人。
けれどその顔はひきつっていて、先ほど大総統が通りましたと顔に書いてあるようだった。
中を悟らせないようにする意味もある見張りが、そのような顔をしちゃいけないと思うけど…。
「あ、ぁ。だい、そうと…」
「大総統がっ…がっ!」
中を指さして固まる二人。
彼らと今は話しができそうにないと思い、中に足を踏み入れた。
もしかして、まだいるのかなーと思いつつ。
「大総統が来てたらしいけど、何かしたの?」
「あ、ヒューズさん…今、窓から…」
「窓から?」
アルフォンス君が少し震える指で窓を指さす。
窓から外を覗いて見れば、大総統の車が病院を出発してくところだった。
「大総統閣下が、余計なことに首を突っ込むなって。時が来たら働いてもらうとか…言って、いなくなった。」
だらだらと流れていた汗をごしごしとタオルで拭くエドワード君。
アームストロング少佐も来ていたようで、少し焦った顔をしていた。
「さすが、お耳の早い大総統だな。」
中将から聞いてはいたけれど、何か嫌な予感もしなくもないが…。
「あれ。どしたの、みんな。外の二人も固まってたし。」
何処かへ出かけていたウィンリィさんが戻ってきて、父さんもようやく我に返った。
彼女の登場でいくらか場が和んだ。
「うん…嵐が通り過ぎた…」
「あー。びっくりした。」
首をかしげるウィンリィさん。
けれど教えてあげることはできなくて、僕の方に説明を求められたけど困ったように笑うだけにとどめた。