第6章 『理解』 4
翌日。
第五研究所爆発の件や、スカーに殺された国家錬金術師の件や、ショウ・タッカーの人権侵害の件。
僕は仕事が机の上に溜まりに溜まっているのを見て、自分の執務室から逃げ出した。
「副司令、やらないと仕事は終わらないですよー。」
「うーん。なんとかして隠滅できませんか?」
「無理ですよ!そんなことしたら僕が中将に怒られちゃいます!」
ヴィンズ以下全員のデスクが置いてある監査司令部のデスクルーム。
一番の後輩さんに泣きつく。
僕が留守の間ずっと僕の仕事をしていたヴィンズは三倍増しで眉間にしわを作っている。
最終的には僕がハンコを押さなきゃいけないものが沢山あるからだ。
そう……たくさん。
「ひぃ!」
突然悲鳴を上げる後輩さん。
彼の視線を追って顔をあげると、なんだかいつもよりもいかついサングラスを掛けた中将の姿。
にへら。と笑って難を逃れようと試みる。
「ヒューズ。」
「なんでしょう、中将。僕は手伝える仕事がな、い、か……と。」
ゴゴゴ…と聞こえてきそうなくらいの威圧。
さすがにゴクリと喉を鳴らしてしまった。
「わっはっは!そんなに怯えるなヒューズ、お前の父親がエルリック兄弟の見舞いに行っていると聞いてな!」
「あ、えぇ。今日も行くと言っていましたから。」
でも、なぜわざわざ中将が?
「ここだけの話し。大総統が自ら彼らに口止めするために、その病院へと向かったそうだ。ん?どうだ、面白いだろ?」
面白くねぇっす。
大総統自ら。と言う事は相当厄介な事なのだろうか『賢者の石』にかかわる事柄は。
「第五研究所の爆発と不審な人物。エルリック兄弟の旅の目的『賢者の石』が関わっていると思う。」
どうだ!と言わんばかりの中将。
デスクルームにはほとんどの監査のメンツが揃っており、各々の仕事の手を止めて、次なる中将の言葉を待っていた。
「極めつけは大総統。彼が動くほどの事だったらしい。きな臭いとは思わんかね?……軍内部の事にせよ、外部の事にせよ、それらしき情報に触れ次第わしに報告せよ。」
「「はい。」」