第6章 『理解』 4
「おめーはロイがいなかったらのたれ死んでた。んで、俺がいなかったら飯と愛を貰えなかった。」
「愛って……」
「クサイかもしれねぇがその通りだろ。お前がこんなにも笑うようになって、家族の事を大事に思えるようになって、仲間と冗談を言い合えるのは、俺たちのおかげだ。」
そう言ってぐりぐりと僕の頭を撫でる。
「うん。父さん、ありがとう。」
なんだか、悩んでいたのが嘘のようだった。
中将がイシュヴァールの生き残りで、賢者の石が実は大量の殺人実験のたまもので、軍が実は潔癖じゃなくて、エドワード君たちが何者かに襲われて、僕がこの国の無意味な戦争を止めようとしていて……。
それもすべて、僕が受け身で傍観者になろうとしていたから悩んでたんだ。
エドワード君たちは当事者だから、こいつとあれをして、あいつにこれをして、って前向きなんだ。
「エドワード君とアルフォンス君が羨ましいよ。お互いに支え合って前に進んでる事とかがさ。」
「はっは。今更かよ。」
「父さん、僕。軍の暴挙を止める。」
なぜ戦争を起こすのかを突き止めて、戦いを止めさせる。
イシュヴァールに手を差し伸べて、中将に今までのお返しをする。
んで。
「んで、みんなでエリシアの誕生日をお祝いする。」
「いい考えだな。その時は…」
「その時は、ロイもエドワード君もアルフォンス君も、みんなも呼んで盛大にパーティーしよう。」
「……お前、いつの間にかおっきくなったな。」
そう言って僕の肩を抱く父さんは大きくて優しくて酒臭かった。