第6章 『理解』 4
こっちです。とちょっぴり疲れた顔のウィンリィさんを部屋に案内する。
「すみません、騒がしい中に来てもらって。」
「ううん。いいんです、楽しかったから。」
そう言ってはいるが、少し悲しそうに笑う。
きっとエルリック兄弟の事を想っているのかもしれない。
「エドワード君とアルフォンス君ならきっと大丈夫ですよ。」
「そう、なのかな…」
「確信は無いけれど、彼らはきっとあなたを悲しませるような事はしないと思うから。」
だから大丈夫。と僕が言う事じゃないんだろうけど、優しくそう伝えた。
多少難しい顔がほどけたウィンリィさんに、おやすみなさい。と手を振って部屋を後にしてリビングに戻れば、アリスとヴィンズが帰る支度をしていた。
外まで彼らを見送りについて行く。
「二人とも、今日はありがとう。」
「副しれーも元気になって良かったですね!」
「うん。アリスのおかげだよ。」
きらきらと笑うアリスにはいつも元気をもらってる。
いつもより少し緩い顔になっているヴィンズが口を開く。
「ビーネ。俺はお前の力に嫉妬している。俺にその力があったのなら、俺は俺の国を作る。」
「ヴィンズらしいね。」
「でも、力を持っているのはお前だ。お前がその力で俺が思う理想郷を築きあげてくれるのなら、お前と意を違えるまで俺の力をお前に貸す。」
彼はそれだけ言うと運転席に乗り込んで扉も閉めてしまった。
「ヴィンズはいつでも難しいね。簡単に副司令が好きって言えばいいのに。」
「男ってそう単純じゃないんだよ。ヴィンズは僕に一人じゃないって言ったんだ。」
「そのとおり!副しれーは一人じゃないよ!」
おやすみなさい!とアリスも元気にあいさつを言って車に乗り込んだ。
ばいばい。と手を振って二人を見送る。
「一人じゃない。か……。」
「この世でお前だけが一人な訳ねぇだろ。バッカだな。」
「父さん!」
独り言のつもりが父さんに聞かれていた。
煙草をくわえてお酒で火照った体を夜風でさましていた。