第5章 『理解』 3
「あら、ヒューズ副しれー。」
「あ、アリス…。」
仕事の最中なのだろう、可愛らしい女性が資料を抱えながらこちらに向かって走って来る。
「どーしたんですか?元気ないですよ?」
「うん…。」
握ったままの銀時計。
開いて眺めて見れば、少し大きいなと思った。
「あ、銀時計。と言う事は…司令から聞いたんですね?」
「うん。みんなは知ってたんですか?」
「うん…。前に司令が副司令の銀時計を持っているのが気になって聞いちゃったの。そのときに…」
中将は自分の血筋の事を話した時に、僕に銀時計と自分の思いを託すつもりだったそうだ。
老いた体では何もできやしない。ならば、自分の心血を注いで育てた僕にすべてを託そう。そう、考えていたそうだ。
「でも、僕じゃなくても良いんじゃないかな?」
「だめですよ。」
「え?」
あまり背の変わらないアリスが僕の顔を覗きこむ。
「ヴィンズさんが推薦したんですよ!俺はこいつに敵いません、だからこいつを育ててくださいって!」
あの、堅物のヴィンズが…
だから副しれーのお守も担当してるんですよー。と言う。
お守…頼んだ覚えはないっ!
アリスとはそこで別れ、軍法会議所が近かったので父さんを訪ねに行くことにした。
「父さん。」
「ん?おぉお!ハニー!」
ぐりぐりと撫でまわされる。
周りの連中は慣れたものだ。
「なんだ、どうした!寂しくなったのか?」
「いや、たまたま近くを通りかかったから。」
差し入れに買ってきたコーヒーを渡して、一旦落ち着かせる。
「聞いたか?第五研究所が爆発したって。」
「ん?うん。聞いたよ。」
「あれ?そんなもんだったのか?あいつら。」
父さんが安心したような拍子抜けしたような反応を返してくる。
「あいつら?」
「おぉ、エドワードが重傷で病院に入院してるって…知らないのか?」
「エド、ワード君……?」