第5章 『理解』 3
嫌われ部署の僕らはどこへ行っても疎ましい目で見られる。
どうせ、賄賂でも受け取ってるんだろう。と。
「純粋に力のある者を集め、力を正しく扱い、本来国を守るべき盾としてしっかりと立つために、軍はあるべきだ。わしは自らが煮え湯を被り、金で包丁を振りまわす部下共を切り捨てた。」
体質改善。
…そんなおおそれたことをたった一人で。
「わしの理想の包丁を作り上げるために、今の仲間を集めた。わしはお前の中に曲がらぬ義を見たのだよ。わしにはもう果たすことのできない義をな。決してお前の血を買ってここに入れた訳じゃないぞ。」
僕はジプシーの先天的な錬金術の才能を買われて、ここに入ったんだとばかり思っていた。
「中将……」
「親の子離れ、子の親離れ。」
中将はデスクの引き出しから桐の箱を取り出した。
「『水煙の錬金術師。』」
中から出てきたのは僕の銀時計。
「父親の背を追って軍に入った事は知っている。大罪を犯した血濡れた錬金術を使ってまでもな。」
「僕はただ、父のように大切な人を守れるようになりたいと思っただけです。」
「それはわしも同じこと。家族を、友を守るために軍人になった。故郷を捨ててな。」
そう、サングラスを外して目を細める中将の瞳は赤茶色をしていた。
どうして今まで気が付かなかった。
彼がイシュヴァールの血を引いてることにっ!
「内乱に駆り出されたって…!それじゃぁ、ほとんど身内を!!」
「皆まで言うな。アメストリス軍の力の誇示のためだ。」
「そっ…そんな!」
「理不尽かね。だから、ヒューズ。この戦好きのアメストリス軍を止めろ。わしには理解のできない繰り返される戦争を止めろ!……止めて、くれ。」
僕は銀時計を渡され、そのまま部屋から追い出された。
整理のつかない脳ミソ。
ふらふらと軍の廊下を当てもなくさまよう。