第5章 『理解』 3
「ヒューズ。」
次の日。
やっぱり僕は中将に呼び出された。
「昨日、第五研究所で爆発があったのを知っているかね。」
「いいえ。昨日は体調がすぐれなかったのでヴィンズに後を頼み帰宅しました。」
「嘘をつくな。」
いつもの陽気な中将じゃなかった。
…もう、どうしたらいいか僕にはわからない。
僕だって、生きた人間を必要とする『賢者の石』の研究は許せない。
けれど、それを糾弾してそれからどうなる?
父さんは?ロイは?東方司令部のみんなは?少佐やロスさんブロッシュさんは?エドワード君やアルフォンス君は?
「『賢者の石』これの事についてはいくらか噂を耳にする事はあった。わしも内乱に駆り出された身だからな。」
戦争に勝つため。
そのためには犠牲もいとわない…か。
「ヒューズ。わしが監査に居るのはなにも嫌いな人間を辞めさせるためじゃぁない。大切な仲間を守るためだ。そのためにはカメのように時には甲羅に身を潜め機会を窺い、時が来れば甲羅から手足を伸ばし前進する。」
そう、話をし始めた中将は優しいおじいちゃんのようだった。
「ただな。わしの甲羅はもうぼろぼろ。部下を一切入れ替えてもう割れる寸前だ。」
「…!?」
一切入れ替えた?
みんな何かしらの理由が重なってここを離れたのだとばかり…!
「不思議か?」
「なぜ、でしょう…」
「我々はいわば、首切り包丁。この包丁を恐れるアホな輩と癒着し続けていれば、本来の監査の役割などはたさんだろう?上からは圧力を掛けられ、下からはゴマすりされ、もう油切れじゃ。」
確かにそうだ。