第1章 『出会い』
~~~~~
タッカーさんの家で手掛かりを探して二日目。
本を読んでばかりの俺たちに、ニーナが遊んでほしそうだったので、息抜きに走り回っていると、先日大佐の部屋で見たハニーさんが訪問して来た。
「留守…な訳ないですよねぇ。」
前と同じく軍服に身を包んだ姿は、酷く大人びて見える。
「おにーちゃん、誰?」
「ん?僕はヒューズ。君はニーナちゃんだね?お父さんは居る?」
「いるよ!」
ニーナが「呼んでくる!」と元気よく走り去る。
と、ぼーっと突っ立っていた俺たちの方に彼の視線が突き刺さった。
「エルリック君。奇遇ですね。」
穏やかににこりと笑う様子は何を考えているかわからない。
「あのときはどーも…タッカーさんに用事ですか?」
「えぇ。あ、いえ。せっかく東部に来たのでお顔を拝見しに。」
笑顔のまま。
ピタリとはりついた笑顔。
「これはこれは、ヒューズ監査官。よくいらしてくださいました。」
「お久しぶりです。タッカーさん。」
家の中へと入ってしまった二人。
俺らはニーナと外にいる。
「なんか、ヤな雰囲気だなあいつ。」
「…うん。怖いって言うか冷たい。」
「だな。」
帰り道、俺はハボック少尉に彼の事を聞いてみた。
「ハニー?あぁ、あいつの事か。あいつがどうかしたか?」
「どうって訳じゃねぇけど…」
「まぁ、あいつ悪い奴じゃないぜ?最初はとっつきにくいかもしれないがな。」
滞在している宿屋まで送ってもらって、少尉とはそこで別れた。
夕食の後、唐突に部屋にお客がやって来た。
「はい?」
「夜分にすみません。ヒューズです。」
急に身体が緊張する。
気取られないようにと普段を装って扉を開けて、彼を部屋に招き入れる。
昼間見たときと同じく軍服の上にコートを羽織っている。
幾分疲れた顔はしていたが、あまり変わりはないように見えた。
「緊張しないでください。ただ、あなた達に挨拶をと思って。」
「挨拶って、この間もしたんじゃ…」
「まぁ、挨拶と言うよりも、訂正を…」
訂正?と首をかしげる。
するとやんわりと笑って、自分の名前を間違っている。と言って来た。
「ハボック少尉にハニーの事を聞かれた、と聞きまして。…僕はビーネ・ヒューズ。ハニーはロイ大佐と父さんがつけたあだ名なんです。」