第4章 『理解』 2
「まったく。どいつもこいつもここに監査がいる事を忘れてくれてるね。」
さて。と、立ち上がった兄弟が僕の言葉にピタリと身体を止めた。
「だ、黙っててくれるよな?」
「どうだか。軍の人間が軍を信用せずに内情を探るなんて、僕らからしたら拘束ものだぞ。」
「お前は……軍、軍って、大勢の人が実験に使われてんだぞ!こんな非人道的な事をしてるやつらの事を庇うのかよ!」
庇う?
あんな腐りきった奴らの事を誰が一番大切だと思うかよ。
僕が一番心配なのは……
「少佐が言う様に、准将以上の人間が関わっているというのなら話は別だ。」
「お前の保身のためか!?」
「違う。監査司令部の副司令である僕が、その事実を知らされていないってのが重要なんだ!僕より上の人間しか知らないのなら、エイドス中将しか知らないからだ!」
僕の剣幕にエドワード君が口をつぐむ。
「准将…中将…それ以上がいるとすれば。この実験は軍の一部で取り行われているような小規模なものじゃない。軍全体が黙認して行なって来た大がかりな実験だ。……事実を表沙汰にすれば、アメストリスに戦争が起こるぞ。」
「んなことやってみなきゃわかんねぇだろ!」
「だから君はガキなんだっ!僕にはマルコーさんの言った『真実の奥のさらなる真実』が理解できた気がする。」
僕らがこの事実を掴んだ事は、既にエイドス中将や大総統のお耳に入っているだろう。
「……保身のためじゃねぇか。真実を遠ざけることによってお前の地位が確保される!そんなに少佐でいることが大事か!」
今、エドワード君に構っている暇はない。
彼の言葉を背に受けながら、部屋を後にした。
「僕は君たちみたいに、がむしゃらに前へは進めないんだ…っ!」
・・・