第4章 『理解』 2
それをしなかった理由……か?
真実のさらに奥。
「軍の下にある錬金術研究所は、中央市内に現在4か所。そのうちドクター・マルコーが所属していたのは第三研究所。ここが一番あやしいな。」
ガサガサとエドワード君が引っ張ってきたのは地図。
僕は、地図ぐらいは頭に入っているので彼らの中に頭を突っ込みはしなかった。
「これ…この建物なんだろう。」
「以前は第五研究所と呼ばれていた建物ですが、現在は使用されてないただの廃屋です。」
アルフォンス君の疑問に即座にロスさんが答える。
「これだ。」
「え?何の確証があって?」
「隣に刑務所がある。」
あぁ、うん。あるね。
「材料をそこで調達できるってわけだね。」
「あぁ。表向きには刑務所内の絞首台で死んだことにしておいて、生きたままこっそり研究所に移動させる。そこで賢者の石の実験に使われる…そうすると、刑務所に近い施設が一番怪しいって考えられないか?」
エドワード君の言う事に一理ある。
「この研究機関の責任者は?」
「名目上は鉄血の錬金術師バスク・グラン准将という事になっていたぞ。」
「そのグラン准将にカマかけてみるとか…」
「グラン准将は、先日の国家錬金術師殺人事件で亡くなっているよ。」
部屋に沈黙が降りる。
とっかかりを見つけたがそれが潰されていたとなれば、何かの意図を感じずにはいられない。
「しかし、本当にこの研究にグラン准将以上の軍上層部が関わっているとなると、ややこしい事になるのは必至。そちらは我輩が探りを入れて後で報告しよう。」
「あぁ。」
「それまで少尉と軍曹はこの事は他言無用!エルリック兄弟はおとなしくしているのだぞ!」
「「えぇ!?」」
「む!さてはおまえたち!この建物に忍び込んで中を調べようとか思っておったな!」
……図星だな。
「ならんぞ!元の身体に戻る方法がそこにあるかもしれんとは言え、子供がそのような危険な事をしてはならん!」
「わ、わかったわかった!そんなあぶない事しないよ。」
「ボク達、少佐の報告を大人しく待ちますっ!」
ははは。
口先の器用さは大人顔負けの兄弟。
それが彼らなりの処世術なんだろう。
バタバタと彼らが出て行って部屋がしんとする。