第4章 『理解』 2
この後はいつも通り。
溜まった仕事をこなしつつ、定時になったら仕事が残っていても家に帰る。
「…はらへったな。」
歩いて帰れる距離にある家へと向かう。
久しぶりに帰る家。自然と早足になる。
「ただいま!」
玄関で大きな声を出せば、ぱたぱたぱた!と小さな足音が近づいてくる。
「にいちゃ!おかえりなさ!」
「い。はどうした、い、は。…ただいま、エリシア。」
小さな妹を荷物と一緒に抱き上げ、食事の準備をしているだろう母さんの元へと向かう。
「おかえりなさい、ビーネ。」
「ただいま、母さん。」
自室に荷物を投げ入れ、早速リビングに戻って夕食の席に着く。
エリシアは終始僕にべたべたで父さんが見たら嫉妬で狂うかもしれないと思った。
「エリシア、また大きくなったね。」
「そうよ!ご飯もたくさん食べるし、お父さんともいっぱい遊ぶんだから。」
「そっか。」
一生懸命スプーンを使ってシチューを食べる妹に頬がゆるむ。
親バカ親バカと父さんに良く言うが、僕の案外兄バカなのかもしれないな。
「ビーネも少し焼けたんじゃないかしら?電話もくれないからお父さん心配してたわ。」
「田舎にいたんだ。こことは違って何もないけど、いいところだったよ。」
「仕事だって言うのに、随分楽しんで来たのね。」
和やかな食卓。
父さんは仕事が忙しいのだろう。
エリシアが寝る時間になっても帰ってこない。
エリシアを寝かしつけた母さんが紅茶を入れてくれた頃に、ようやく静かに父さんが帰って来た。
「おかえり、父さん。」
「お、ハニー帰ってたか。」
明日も忙しい母さんに、父さんの食器は洗っておくと先に寝かせてあげて、僕と父さんは薄暗い食卓で静かに団欒する。
「エルリック兄弟は無事に?」
「うん。新たな目的も見つけてはりきってるよ。今は、ここにいる。」
「ははっ。あいつらも忙しねぇな。」
皿は自分で洗うからいい。と言った父さんの言葉に甘えてそろそろ重たくなって来た瞼に従い、自分のベッドに倒れ込んだ。
それから一週間。
平和も平和。
いつも通りのデスクワークに体がなまり始めた気がする……。