第4章 『理解』 2
「ただ今帰還いたしました。」
「うむ、ご苦労。それで焔と鋼、それから剛腕はどうであった?」
ん?ん?と答えを急く中将。
労いもそこそこに錬金術師たちの事を聞いてくるのは、うわさ好きのマダムと変わらない。
「焔は相変わらず。東部で腕を振るっております。衰える事は無いでしょう。」
「はっはっは。奴は出世欲の塊みたいなものだからな!東部のグラマンのお気に入りな訳だ。」
「剛腕は……暑苦しいです。」
「うむ。こちらは聞かずとも良かったな。」
「鋼ですが…」
ここで一旦言葉を切った。
エドワード君は軍のために何かをしているというよりは、自分の目的のために軍を利用している。
報告のいかんによっては、彼の目に止まる可能性もあるだろう。
「鋼に関してはわしのほうでも多少調べが付いている。…ちっこい、とかな。」
ちっこい……それだけですか…。
その程度の情報なのはロイが徹底して管理しているのだろうか。
しかし中将の情報網は侮れない。
疑似餌に食いついて見せるしかないだろう。
「えぇ。ちっこかったです。僕よりも5センチは小さかったでしょう。」
がははは!と笑う中将。
冗談に続いて、報告を織り交ぜる。
「彼は小型犬のように、地面を這いずり回り、査定のため、自分の将来のためと、自分の興味を引く研究に食指を伸ばしています。焔と違い出世にあまり興味は示しませんでした。」
「ほうほう。…それで戦闘の腕の方はどうかね?」
こちらは戦争に行っても死なずに戻ってこられるかが知りたいのだろう。
こちらは簡単だ。
事実をありのままに報告する。
「すべて下です。機動力を生かすと言った点では焔に勝ります。錬金術を駆使してというと、焔には及ばず剛腕以上となるでしょう。」
「……とすると、お前の足元にも及ばんな。」
ですね。と褒めの言葉と受け取り中将の部屋を後にした。