第3章 『理解』
「身体を持って行かれた後に、幸か不幸か不可抗力で再度人体錬成をしてしまった。…それで僕は体を取り戻し。仲間を、家族をすべて失った。」
「……じゃぁ、お前も真理を」
だとすればこいつも陣なしで錬金術がつかえるのか。
「僕らは各国を気ままに旅するジプシーという一族だった。今じゃ生き残りは僕だけだけどね。……その後は君には想像がつくだろ。」
……一人になったヒューズは誰かに保護されて、軍に送られてマース・ヒューズ中佐に出会った。中佐の事だからこいつを引きとったんだ。
「これは僕が8つの時に償う目標すら無くし犯した大罪だ。僕が錬金術を使うのをためらうのも、父さんと同じ軍に居座り続けるのも、大罪を背負っていてもなおマース・ヒューズと言う男が僕を生かしたから……。」
ヒューズは泣くこともせず顔をゆがめることもせず、自分の犯した罪を心の奥底で大切に思っている。
俺たちみたいに、身体を取り戻すという目的もなく、俺がアルの身体を失わせてしまったという償いの目的すらなく、ただ、拾ってくれた中佐のために生きている。
「僕だけが君たちの事を一方的に知っているのは、きっと嫌だろうから。」
「別にっ……」
「でも、あんまり人には話さないでね。」
お前の事を責めるつもりで嫌いな態度を取ってたんじゃない。
羨ましがったり、嫉妬して、じゃない。
一人で何でも抱え込んでいるようなお前が、嫌に大人っぽく見えたからかもしれない。
「戻ろう。アルフォンス君に君を探しに行ってくると言って出て来たんだ。」
くるりとこちらを向いたヒューズはほほ笑んでいた。